今回は、雇用関係助成金を複数併用する場合の「併給調整」に関する実務上の注意点についてです。助成金を組み合わせて活用することは企業のメリットになりますが、要件を満たしていても併給調整により「一方しか受給できない」「一部が減額される」といったケースが多いため、事前の確認が非常に重要です。
1. 併給調整の基本原則(共通要領)
雇用関係助成金では、二重の支給(国費の重複支出)を防ぐために、主に以下の原則に基づき併給調整が行われます。
- 「同一の行為(取組)」の重複禁止: 同一の事業主による「同一の行為」を根拠として、同時に二つ以上の助成金を受給することはできません
- 「同一の経費・賃金」の重複禁止: 同一の事業主による「同一の経費」や「同一期間の賃金」の支出に対して、同時に二つ以上の助成金を受給することはできません
- 他の補助金等との調整: 助成金以外の国や地方公共団体からの補助金(間接補助金を含む)を受給している場合、その目的や助成対象(経費や賃金)が重複していると、併給調整の対象となります
2. 実務上の主な注意点と具体例
① 経費に対する助成の重複(設備投資や研修費用など)
同じ設備や機器の導入経費に対して、複数の助成金(例:業務改善助成金と、人材確保等支援助成金の各コースなど)を重ねて申請することはできません。同一の経費負担を軽減する目的での申請は、双方の要件を満たしていても一方しか支給されません。
② 同一労働者に対する複数の取組
同じ従業員に対して複数の処遇改善等を行う場合、コースの組み合わせによって併給の可否が分かれます。
併給不可の例1
同一の労働者に対して、キャリアアップ助成金の「短時間労働者労働時間延長支援コース」と「賃金規定等改定コース」を同じ対象期間の処遇改善として同時に受給することはできません。
併給不可の例2
休業手当を助成する「雇用調整助成金」の対象となっている労働者が、同じ期間に「人材開発支援助成金」による事業内訓練を受けた場合、同一日時において同時に双方の要件を満たすことはなく併給できません。
③ 順次活用することで「併用可能」なケース
同時に要件を満たすことはできなくても、ステップを踏むことで一部の併用が認められているケースもあります。
併用可能な例
「トライアル雇用助成金」を活用して有期雇用し、トライアル雇用期間終了後に引き続き継続して雇用(無期・正社員化)する場合、条件を満たせば「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース等)」の第2期支給対象期分以降を受給することが可能です。